いろいろなものを引きずるちいさなひと
PAGE 01

ちいさなひとは、
いろんなものを引きずっていました。

鎖。ほこり。古い紙。誰かの声。

あと、なぜか片方だけ重いくつ。

鎖についた札や影を見ているちいさなひと
PAGE 02

鎖には、いろいろ書いてありました。

やさしそうな言葉もありました。

でも、やさしそうな言葉ほど、たまに重いのです。

部屋のすみにある光る輪を見つめるちいさなひと
PAGE 03

ある日、部屋のすみに、まるい輪がありました。

光っていました。
命令もしません。説明もしません。

そういうものは、だいたい少しあやしい。

通りかかったおっさんが輪を指さす場面
PAGE 04

ちいさなひとが見ていると、
へんなおっさんが通りかかりました。

おっさんは、輪を指さしました。

それだけでした。
やっぱり少しあやしい。

輪をくぐると窓が開きほこりが見つかった顔をする場面
PAGE 05

ちいさなひとは、輪をくぐりました。

すると、窓が少し開きました。
風が入りました。

ほこりが、いっせいに「見つかりました」という顔をしました。

胸の奥の小さな部屋で奥のひとがランプを持っている場面
PAGE 06

胸の奥の小さな部屋には、
奥のひとがいました。

ちいさなひとが荷物だらけの日は、
奥のひとも、ほこりをかぶっていました。

外から風が入ると、奥のひとはくしゃみをしました。
「こっちにも来たか」と言いました。

外の部屋をはく人と内側でランプをふく奥のひと
PAGE 07

ちいさなひとが床をはくと、
奥のひとのランプのほこりも、少し落ちました。

奥のひとがランプをふくと、
外の鎖が、からん、と鳴りました。

ふたりとも、少しだけ知らん顔をしました。

まだ重いくつと残った鎖のそばに立つちいさなひと
PAGE 08

くつは、まだ重い日がありました。

歯も、たまに思い出したように痛みました。

腰の鎖は、なぜかまだえらそうでした。

朝の部屋で窓を開ける人と朝ごはんを食べる奥のひと
PAGE 09

次の朝、またほこりが出ていました。

ちいさなひとは、ため息をついて、少し笑いました。
窓を開けました。

胸の奥では、奥のひとが朝ごはんを食べていました。

窓の外を、あのおっさんが通りかかりました。
会釈だけして、行ってしまいました。

ボタンでもスワイプでも読めます 1 / 9

この絵本について

知らず知らずのうちに抱え込んだ重荷。誰かに言われた言葉。失敗するかもしれない、という思い込み。胸の奥からふいに出てくる、名前のつけにくいもの。

そういうものは、見ないふりをしていても、部屋のほこりみたいに、少しずつたまっていきます。

外の自分が荷物だらけになると、胸の奥のひとも、ほこりをかぶる。外を少し整えると、奥のひとの部屋にも風が入り、奥のひとが明るくなると、外の自分も少し動きやすくなる。

この絵本は、そんな行ったり来たりを描いた小さな話です。全部を消す話ではなく、また重くなったときに、また整えられると思い出すための話です。

へんなおっさんは、そのお手伝いを少しだけしています。